さて、今回はちょっと聞き慣れない方もいるかもしれませんが、「生活福祉資金貸付制度」について紹介したいと思います。
簡単に言うと低収入などで民間の金融機関からお金を借りられない方向けに国が超絶低金利(もしくは金利ゼロ!)で貸付を行うというもの。
これだけ聞くと「何て良い制度なんだっ!!多重債務でもうどこの金融業者も貸してくれないのですぐにでも相談しに行こう!」なんて気持ちになりますが、残念ながら
多重債務者=貸し倒れリスク高い
といった理由からほぼ審査は通りません。とは言えこちらの制度を利用している方の中には借金を抱えているケースも結構あるみたいなので、一概に借金があるからといって審査に通らないとも言いきれません。
とは言え、やはり審査は相当厳しいようですが、本当に困窮していて、この制度が利用できる条件を満たしている人でも”そもそも制度自体を知らない”といったケースも多いと思うので、まずはどういった制度なのかを把握してみてはいかがでしょうか。
生活福祉資金貸付制度とは?貸付条件はどうなってるの?
厚生労働省管轄で各市区町村社会福祉協議会(※1)が窓口となっています。低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支え、在宅福祉や社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。
※1 社会福祉協議会とは各都道府県及び市区町村に設置されており、地域での福祉サービスや相談活動、ボランティアや市民活動、共同募金運動などの支援、協力を行っている半官半民組織です。
貸付対象
貸付制度を利用できる対象は以下となっています。
低所得者世帯 | 資金の貸付けにあわせて必要な支援を受けることにより独立自活できると認められる世帯であって、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)。 |
障害者世帯 | 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者(現に障害者総合支援法によるサービスを利用している等これと同程度と認められる者を含みます。)の属する世帯。 |
高齢者世帯 | 65歳以上の高齢者の属する世帯(日常生活上療養または介護を要する高齢者等)。 |
資金種類・貸付条件
貸付資金は以下4種類に分類されます。
【1】総合支援資金
資金の種類 | 資金の使途・貸付条件 |
生活支援費 | ・生活再建までの間に必要な生活費
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
住宅入居費 | ・敷金、礼金等住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
一時生活再建費 | ・生活を再建するために一時的に必要かつ日常生活費で賄うことが困難である費用 ・就職・転職を前提とした技能習得に必要な経費 ・滞納している公共料金等の立て替え費用 ・債務整理をするために必要な経費 等 【貸付限度額】 【貸付利子】 |
主に生活再建までの間に必要な資金として利用。賃貸契約を結ぶ為に必要な敷金、礼金や、滞納中の公共料金の支払いなどでどうしても資金が必要な場合に利用ができる。
利子については保証人ありの場合は無利子、保証人がいない場合でも1.5%の低金利で利用が可能。
【2】福祉資金
資金の種類 | 資金の使途・貸付条件 |
福祉費 | ・生業を営むために必要な経費 ・技能習得に必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費 ・住宅の増改築、補修等及び公営住宅の譲り受けに必要な経費 ・福祉用具等の購入に必要な経費 ・障害者用の自動車の購入に必要な経費 ・中国残留邦人等に係る国民年金保険料の追納に必要な経費 ・負傷又は疾病の療養に必要な経費及びその療養期間中の生計を維持するために必要な経費 ・介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費 ・災害を受けたことにより臨時に必要となる経費 ・冠婚葬祭に必要な経費 ・住居の移転等、給排水設備等の設置に必要な経費 ・就職、技能習得等の支度に必要な経費 ・その他日常生活上一時的に必要な経費 【貸付限度額】 【貸付利子】 |
緊急小口資金 | ・緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付ける少額の費用
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
主に介護や障害者福祉サービスの利用などで必要な経費や災害などで臨時に必要になる経費、就職訓練費用などでどうしても資金が必要な場合に利用ができる。
利子については保証人ありの場合は無利子、保証人がいない場合でも1.5%の低金利で利用が可能。緊急小口資金については保証人の有無に関わらず無利子で利用が可能。
【3】教育支援資金
資金の種類 | 資金の使途・貸付条件 |
教育支援費 | ・低所得世帯に属する者が高等学校、大学又は高等専門学校に修学するために必要な経費
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
就学支度費 | ・低所得世帯に属する者が高等学校、大学又は高等専門学校への入学に際し必要な経費
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
低所得世帯の子供が学校に通う為に必要な資金として利用が可能。こちらは保証人の有無に関わらず無利子で利用が可能となっています。やはり教育関連は優遇されているようですね。親の経済状況が原因で進学を断念する子供も実際多いのでしょうが、こういった制度を利用するとまた道が開けるのかもしれませんね。ただ特筆すべき点としては、こちらの教育支援資金に関しては、借金をするのが親では無く子供になる為、保証人は不要でも世帯内で連帯借受人が必要となっており、通常は親が子供の連帯借受人となって返済をする形となります。
【4】不動産担保型生活資金
資金の種類 | 資金の使途・貸付条件 |
不動産担保型 生活資金 |
・低所得の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
要保護世帯向け 不動産担保型 生活資金 |
・要保護の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金
【貸付限度額】 【貸付利子】 |
こちらは不動産を所有している方限定の貸付制度で、所謂金融機関の不動産担保ローンと同じようなイメージです。利息も年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率となっている為、実際は3%未満になる事が殆どで、かなり有利な条件で借りる事ができます。但し不動産を所有している事が条件となりますが・・・。
貸付制度の審査について
そもそも上記の貸付対象者(低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯)で無ければ利用ができませんが、対象者であり、資金使途が条件にハマっていても、よほどの事で無い限りなかなか貸してくれない(審査が相当厳しい)といった情報が多いです。
また、こちらに申し込みをすると個人信用機関に登録されるのか?といった疑問についてですが、こちらについては個人信用機関には登録される事はありません。さらに言うと返済を滞納したり、万が一返せなくなったとしてもブラックリストになる事はありません。なのでよけいに審査が厳しいのでしょうね。
社会福祉協議会では消費者金融や銀行などと違って個人信用機関への照会はかけず、納税の状況や、地域の民生委員や自治委員などが申込者の実態調査などを行うなど独自の審査を行い融資する、しないを決めているようです。
また、手続きにはそれなりの書類を準備する必要があり、手続きに数週間かかったあげくに審査に通らなかった!!といったケースもたくさんありますので、「生活に困窮しているのであれば資金援助するので生活再建してくださいね!」といった簡単な話ではないようです。
とは言えどうしても資金が必要な場合はまずは窓口で相談してみるのが一番諦めもつくし、ひょっとすると救われる可能性もあります。
借金がある場合は債務整理をすすめられる事もありますが、これを機に借金解決に向けて一歩踏み出すのもアリかもしれません。
あとは基本的な考え方として、こちらの貸付制度は他の公的支援含め、どうやっても資金の捻出が難しい人向けの為、生活保護や傷病手当金など別の支援を受けられる可能性がある場合はそちらを優先してすすめられます。
逆に窓口に相談する事でどのような支援が受けられる可能性があるのか教えてもらうといいでしょう。
貸付制度を利用するにはどうすればいいの?
こちらの貸付制度を利用するには、お住まいの市区町村にある社会福祉協議会が窓口となっている為、まずは社会福祉協議会の所在地を調べて直接窓口で相談するか、電話で問い合わせてみてください。
※だいたい市役所や区役所の近隣にあります。
市区町村社会福祉協議会の連絡先が分からないときは都道府県社会福祉協議会に問い合わせしてみてください。
⇒都道府県社会福祉協議会お問い合わせ一覧
貸付制度のより詳しい情報は社会福祉協議会のWEBサイトでも確認できます。
⇒社会福祉協議会「生活福祉資金について」
まとめ
☑低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯が貸付対象となっている。
☑資金の種類には総合支援資金(主に住居確保や生活再建の支援)、福祉資金(主に職業訓練や福祉関連の支援)、教育支援資金(進学、就学支援)、不動産担保型生活資金などがある。
☑利子は無利息~1.5%程度の超低金利で利用が可能となっている。
☑審査は相当厳しいが、どうしてもお金に困っているなら最寄りの社会福祉協議会に相談してみる価値あり。
利用できる対象者が限定的で審査が相当厳しいとは言え、実際に融資を受けて救われている方々も存在します。融資を希望する場合は、まずは最寄りの社会福祉協議会の窓口で相談するところから始めてみましょう。